独学という独学の波にのまれて居ぬ

 

 

彼は学識のある人であった。

 

私は彼と遭う度に思うことがあった。

 

そう。

「私は、彼のようになれない」

 

劣等感という劣等感を振りかざして、彼と会話していた。

 

劣等感が自虐となり、「ある種の」武器になりつつ、私が発した言葉には常に「とげ」があると、彼にはよく言われたものだ。

 

しかし、彼はそんな私のこともひどくは言わず、「君は頑張っている」と重たい責任を転嫁するような言葉を口にするのであった。

 

その言葉がいつしか、私の心の中に波を与えた。

波の上には私の好きなものがたくさん浮かんでいた。

 

「君は頑張っている」

 

彼の言葉は、私の波を作り、私を波にした。